妊娠中のスタッフの当直勤務の組み方!スタッフの健康と職場の安全のためにできる職場環境作り
公開日: 2024.08.23
更新日: 2025.04.10

妊娠中の医療従事者が当直勤務をすると、流産・早産・妊娠中の怪我のリスクを増加させる恐れがあります。リスクを増加させないために、勤務時間制限や休憩時間の確保など法的措置の実施が必要です。
本記事では、妊娠中の医療従事者への法的保護措置や妊娠中の医療従事者が当直勤務をするにあたって考えられるリスク、妊娠中のスタッフも働きやすい環境を作るための方法について解説します。
妊娠中の医療従事者が当直管理をする際の保護措置や妊娠中のスタッフが安心して働ける環境をつくる方法が知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
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妊娠中の医療従事者への法的保護措置
妊娠中の医療従事者への法的保護措置について、以下2点に分けて解説します。
- 法定勤務時間と休憩規定
- 当直勤務の健康リスク管理
法定勤務時間と休憩規定
男女雇用機会均等法と労働基準法により、妊娠中の女性労働者の勤務時間制限や休憩時間の確保などが定められています。
具体的な内容は、以下のとおりです。
法律 | 内容 | |
男女雇用機会均等法 | 保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保 | ・母体や胎児の健康や妊産婦のための保健指導または健康診査に必要時間を確保することを義務づけている・健康診査等に必要な時間 ① 健康診査の受診時間 ② 保健指導を直接受けている時間 ③ 医療機関等での待ち時間 ④ 医療機関等への往復時間・健康診査等を受ける日は、原則として女性労働者が希望する日(医師等が指定した日) |
指導事項を守ることができるようにするための措置 | ・妊娠中の通勤緩和・適宜の休養や補食ができるよう、必要な措置を実施する ①休憩時間の延長 ②休憩回数の増加 ③休憩時間帯の変更 など | |
労働基準法 | 産前産後休業 | ・産前は6週間(多胎妊娠の場合は14週間)産後は8週間は就業させることができない・産前はこの期間に休業を請求されたら就業させてはいけない・産後は請求の有無に限らず、就業させてはいけない期間 |
妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限 | ・変形労働時間制であっても、妊産婦が請求した場合には、1日および1週間の法定労働時間を超えて労働することはできない。 | |
妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限 | ・妊産婦が請求した場合には、時間外労働、休日労働、深夜業をさせてはいけない・深夜業は午後10時から午前5時までの就業 |
当直勤務の健康リスク管理
当直勤務は長時間労働になりやすいため、妊娠中の医療従事者の健康リスクに悪影響を及ぼす可能性があります。
長時間労働は、流産・早産・妊娠中の怪我のリスクを増加させる恐れがあります。また、妊娠中は睡眠時間が不規則になりやすいにもかかわらず、当直勤務で生活リズムが不規則になると、より睡眠不足になり胎盤の成長の抑制や子宮収縮のリスクが高まるかもしれません。
妊娠中の医療従事者の健康を守るため、妊産婦が請求した場合に時間外労働や休日労働、深夜業をさせることを禁止する法律が存在します。
妊産婦に請求された場合、医療機関は1日8時間、1週間に40時間以上の勤務をさせてはいけません。また、深夜業の対象である午後10時から午前5時までの就業も禁止となるため、シフトを調整する必要があります。
妊娠中の医療従事者が職場環境へ適応するためには?
妊娠中の医療従事者が職場環境に適応するための方法を2つ紹介します。
- 勤務条件や勤務形態を柔軟に調整する
- 当直を代替勤務できるスタッフの調整を行う
勤務条件や勤務形態を柔軟に調整する
妊娠中の医療従事者が職場環境に適応するためには、勤務条件や勤務形態を柔軟に調整する必要があります。
勤務条件や勤務形態の調整の具体例として、以下が挙げられます。
時差出勤 | ・始業時間・就業時間を30~60分程ずらす・フレックスタイム制を適用する |
勤務時間調整 | ・1日30~60分程度短縮する |
通勤手段の変更 | ・混雑が少ないルートへ変更 |
勤務条件や勤務形態の変更は、妊娠中の医療従事者から言い出せないケースも少なくありません。医療機関側から調整できる旨を周知して、妊娠中の医療従事者が抵抗なく活用できるような環境を整えておきましょう。
当直を代替勤務できるスタッフの調整を行う
当直を代替勤務できるスタッフの調整を実施するのも、妊娠中の医療従事者が職場環境に適応する方法の1つです。
当直を代替勤務できるスタッフを確保するためには、事前に妊娠中のスタッフがいることを把握しておく必要があります。なぜなら、体調不良が続き、直前になって代わりのスタッフを見つけるのは、医療機関側にとっても代替勤務になるスタッフにとっても負担が大きくなるからです。
しかし、妊娠の報告は安定期に入ってから実施される傾向にあります。それでは、つわりなどで体調が変化する時期にサポートできる体制がとれないため、妊娠報告は早めにしてもらうよう周知しておくと良いでしょう。
また、日頃から妊娠したらチームでサポートすることをメンバーに表明することで、当直の代替勤務に協力的なスタッフも現れ、シフト調整がしやすくなるでしょう。
妊娠中の医療従事者が当直勤務をするにあたって考えられるリスク
妊娠中の医療従事者が当直勤務をするにあたって考えられるリスクには、以下4つがあります。
- 物理的負担から体調不良が出現・憎悪する場合がある
- 感染症罹患のリスクや免疫力の低下が考えられる
- 大きな精神的ストレスをもたらす
- 長期的な睡眠障害につながる可能性がある
それぞれのリスクについて、解説します。
物理的負担から体調不良が出現・憎悪する場合がある
妊娠中の医療従事者が当直勤務をすると、物理的負担から体調不良が出現・憎悪する場合があります。
妊娠中の医療従事者に負担の大きい作業として、以下が挙げられます。
- 1時間以上の立ち作業(手術、看護業務など)
- 腰に負担のかかる作業(移乗介助、重い物を持ち上げるなど)
- 長時間休憩できない作業
- 連続歩行
- 長時間ストレスがかかるような作業(緊急オペ、突発的な指示の対応など)
特に、看護師は上記作業が多い傾向にあるため、体調不良が出現・憎悪する恐れがあります。負担が大きすぎると、最悪の場合、切迫流産・切迫早産になる恐れがあるため避けるようにしましょう。
感染症罹患のリスクや免疫力の低下が考えられる
妊娠中は、免疫力が低下しているため感染症にかかりやすくなります。
特に医療現場では、血液や体液、排泄物など感染源が多いため、感染症対策が重要です。当直中に緊急搬送された方の対応をしたり、緊急オペが入ったりした場合は感染リスクが増大します。
個人防護服の着用、手洗い・手指消毒の徹底など感染防止策を忘れずに実施するよう改めて周知しましょう。また、感染症を持つ患者や感染症の疑いがある患者のケアは、妊娠中の医療従事者にはさせないなどの対応も必要になるでしょう。
参照:埼玉県「「妊婦さん!気をつけて」 妊娠中に気をつけたい感染症」
大きな精神的ストレスをもたらす
妊娠中の医療従事者にとって、当直勤務は大きな精神的ストレスをもたらす恐れがあります。
医師や看護師が感じている業務に関連する悩みやストレスとして、夜勤(宿直勤務含む)の負担の大きさが上位にランクインしているほど、夜間の当直勤務はストレスがかかります。
それに加え、妊娠中は自律神経の乱れが原因でストレスを感じやすい状態です。そのため、普段は気に留めない発言や出来事に対しても、ストレスを強く感じる場合があります。
妊娠していない医療従事者にとってもストレスのかかる当直勤務を、ストレスを感じやすい妊娠中の医療従事者が行うとなると、より大きな精神的ストレスがかかるのが予測できるでしょう。
また、当直勤務による不規則な勤務時間と睡眠不足によって、ストレスや不安を悪化させる可能性があります。
長期的な睡眠障害につながる可能性がある
妊娠中の医療従事者が当直勤務を行うと、長期的な睡眠障害につながる可能性があります。
妊娠中は、過眠や入眠困難感、熟睡困難感など睡眠障害が生じる傾向があります。日常生活でも睡眠障害が生じている状態で、当直など不規則な勤務を行うとより睡眠不足になるでしょう。
睡眠不足は、作業能力の低下や判断ミスなどを引き起こしやすいため、医療ミスのリスクを増加させる恐れもあります。
妊娠中の医療従事者の健康を守るかつ医療の質を維持するためにも、妊娠中の医療従事者の当直勤務には配慮しましょう。
参照:渡邊美奈子,篠原ひとみ「縦断調査による妊娠初期,中期,後期の睡眠障害と自律神経活動との関連」
妊娠中のスタッフの健康を維持し、働きやすい職場環境を維持する方法
妊娠中のスタッフの健康を維持し働きやすい職場環境を維持するために、以下2つの方法を実践してみてください。
- 心理的な負担を軽減できる健康相談窓口を設ける
- 期間限定の派遣スタッフを採用する
心理的な負担を軽減できる健康相談窓口を設ける
働きやすい職場環境を維持するためには、妊娠中のスタッフに配慮するのはもちろん、他のスタッフへの配慮も必要です。
妊娠中のスタッフは、妊娠したことで他のスタッフから不当な扱いを受けるケースもあります。不当な扱いによって心理的な負担が大きくなると、体調悪化につながります。
また、妊娠中のスタッフをサポートするために、他のスタッフの心身の負担が大きくなっているケースも少なくありません。実際、妊娠中の看護師をサポートしたいという気持ちはありながら、自分の仕事とサポートの両立が難しく負担に感じている方も存在します。
スタッフの状況を把握するために、定期的に上司と面談する機会を設けるのも有効的ですが、気持ちを吐き出せなかったり上司の負担が大きくなったりする場合があります。そのため、心身の調子を相談できるような健康相談窓口を設けるのも選択肢の1つです。
健康相談窓口を設けて、スタッフが健康的に働ける職場環境を整えていきましょう。
参照:中川夏実,渡邊実香「妊娠中の看護師と一緒に働くことに対する若手看護師の心情」
期間限定の派遣スタッフを採用する
妊娠中のスタッフの健康を維持して働きやすい職場環境にするために、期間限定の派遣スタッフを採用するのも1つの方法です。
妊娠中のスタッフが体調不良や産前産後休業で休む機会が多くなると、妊娠中のスタッフの業務を補う必要があります。他のスタッフで分担するのも1つの方法ですが、スタッフの負担が大きくなってしまうため、新たに人材確保を検討する方もいるでしょう。
その場合、正社員スタッフだけでなく派遣スタッフも選択肢に入ります。本来、医療業務の派遣は禁止されていますが、産前産後休業、育児休業、介護休業を取得した労働者の業務の場合は医療業務の派遣が認められています。
派遣スタッフを採用するコストと正社員を採用するコストを比較したうえで、どちらにするか検討しましょう。
参照:厚生労働省「労働者派遣事業を行うことができない業務は」
妊娠中のスタッフも働きやすい環境を作ろう
妊娠中の医療従事者の法的保護措置や妊娠中のスタッフが当直勤務をするリスク、妊娠中のスタッフが働きやすい環境を維持する方法について解説しました。
妊娠中の医療従事者が当直勤務をすると、体調不良の悪化や精神的ストレスの増加など心身ともに負担が大きくなります。そのため、医療機関側は妊娠中のスタッフの意思や状態を把握してシフト調整する必要があります。
妊娠中のスタッフが健康を維持して働ける環境を作るために、健康相談窓口を設けたり派遣スタッフを採用したりと医療機関にできることをしていきましょう。
ファストドクターでは、夜間休日の往診を解消するために、現場を知る往診医やスタッフが往診・オンコールをワンストップで代行します。低コストかつ低リスクで24時間体制を貴院とともに作り上げ、切れ目のない医療の提供が可能となります。
提携医療機関数は641機関を突破しており、委託患者数は93,700人以上、5都市6医師会と契約を結んでいます。多くの医療機関で導入されている実績があり、提携後、離職率や働き方の改善を実感していただいております。
また、現在ファストドクターでは在宅医療を行う医療機関者様を対象に、無料トライアルを含めた特別キャンペーンを実施しています。夜間休日の往診やオンコールでお悩みの場合は、ぜひご相談ください。