在宅医療において薬剤師が抱える課題とは?求められる役割や病院薬剤師との違いを詳しく解説!
2024.08.06
2025.05.26


この記事の著者
「在宅医療で薬剤師が抱えやすい課題は?」「求められる役割が知りたい」
在宅医療を提供する医療機関のなかにはチーム医療を進めていくにあたり、このような悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
在宅医療のニーズの増加により、在宅医療における薬剤師の必要性も高まりを見せています。
本記事では、在宅医療薬剤師が抱えやすい課題や、求められる役割などを詳しく紹介します。また、在宅医療薬剤師と病院薬剤師の違いも解説するためぜひ参考にしてください。
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在宅医療における薬剤提供の現状

医療法人社団 悠翔会が行った「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」では、令和5年度の日本の在宅医療の診療件数は141,553件であったことが報告されています。
そのうち134,977件で薬の処方が行われており、在宅医療での医療的介入の大部分が処方薬によるものであることが明らかになりました。
また、在宅患者に対して薬剤師が患者宅を訪れて薬の説明を行う割合は全体の65%にのぼります。
このように、在宅医療は薬の処方がメインで行われており、在宅医療薬剤師の稼働状況は高い現状にあります。
(参考:医療法人社団 悠翔会「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」)
在宅医療薬剤師がチーム医療に必要性な理由

チーム医療において在宅医療薬剤師は以下の2つの理由から必要となります。
- 高齢者の増加
- 医療機関の減少
それぞれ確認していきます。
理由①:高齢者の増加
近年、日本では高齢化が進んでいます。総務省が公表している「令和4年版高齢社会白書」によると日本の総人口のうち約29%が65歳以上の高齢者であることが示されました。
また、少子化に伴い今後も65歳以上の高齢者の割合は増加することが予想されています。
特に75歳以上の後期高齢者の方のなかには、足腰が不自由で医療機関に訪れることが困難なケースもあります。
そのため、高齢化が進む日本では在宅医療の社会的ニーズが増加することが予想されるため在宅医療薬剤師の必要性はますます高まるでしょう。
(参考:総務省「令和4年版高齢社会白書」)
理由②:医療機関の減少
厚生労働省の調査によると、日本国内の医療機関の数は平成2年をピークに減少傾向にあることが報告されています。

(引用:厚生労働省「医療提供体制の現状 〜病院数の推移〜」)
医療機関の減少は、政府の「療養病床の再編」という方針によるもので医療費の削減と適切な医療の提供を目指して進められています。
また、「療養病床の再編」により医療機関の病床数も同様に減少しているため、それに伴い在宅医療を求める患者も増加することが予想されています。
在宅医療を必要とする患者が増えれば、おのずと在宅医療薬剤師も必要性が高まるのです。
在宅医療における薬剤師の課題

在宅医療のニーズが高まるなかで、在宅医療薬剤師は今後さらに重要な存在となります。しかし、在宅医療薬剤師の体制構築には多くの課題があることが問題視されています。ここでは、在宅医療における薬剤師が抱える課題を4つ紹介します。
- 在宅医療で薬剤提供をする薬剤師不足
- 深夜や早朝の薬剤提供体制の構築不足
- 在宅医療における薬局情報の周知が不十分
- 薬局経営においてコストがかかる
それぞれ確認していきます。
課題①:在宅医療で薬剤提供をする薬剤師不足
在宅医療は、近年ニーズが増加してきた医療形態となります。そのため、在宅医療に関する専門知識が豊富で経験を持っている薬剤師は多くはありません。
また、都市部と比べて地方は薬剤師の絶対数自体が少ない傾向にあります。
薬剤師の人数が少ない調剤薬局では、そもそも在宅医療に在宅医療薬剤師として訪れることが困難なのです。
このように、在宅医療に対応した薬剤師の不足も今後の課題といえます。
課題②:深夜や早朝の薬剤提供体制の構築不足
在宅医療では患者の体調急変に対応できるように24時間体制で患者をサポートすることが求められます。
しかし、現状では深夜や早朝における薬剤提供体制は十分に構築されているとはいえません。
人手不足やコストの問題から24時間体制が難しい薬局が多いのが現実です。
そのため、24時間365日体制の薬剤提供体制の構築が課題となっています。
課題③:在宅医療における薬局情報の周知が不十分
在宅医療での薬局情報が十分に周知されていないため、適切なサービスを受けるため「どの薬局に依頼すれば良いのか」「どんな薬剤師が対応してくれるのか」が不明確であるケースが少なくありません。
在宅医療での薬の提供においてどの薬局がどのようなサービスをしているか、患者やその家族が把握できるような取り組みが必要です。
課題④:薬局経営においてコストがかかる
在宅医療を支えるために薬局経営をするには多くのコストが必要となる点も課題の1つです。
例えば、専門的な知識を持つ薬剤師の雇用や研修、また深夜や早朝の対応体制を整えるための人件費増などがあり、大きな負担となります。
また、薬を適切に提供できるように無菌室の整備などの設備投資なども必要です。
このように、薬局が在宅医療向けのサービスを提供するための負担が大きく、参入ハードルが高いことがが課題となっています。
在宅医療薬剤師が抱えやすい悩
在宅医療薬剤師は患者の自宅での薬剤管理や服薬支援を担うなかで、独自の悩みを抱えやすい職種です。
医療現場とは異なる環境下で、患者やご家族、他職種との連携を求められるほか、複数の業務を効率良くこなす必要があります。
在宅医療薬剤師が直面しやすい主な悩みを3つ紹介します。
- 書類作成の多さ
- スケジュール管理の難しさ
- チーム医療でのコミュニケーション
それぞれ確認していきましょう。
書類作成の多さ
在宅医療薬剤師は、訪問記録や服薬指導内容、医師やケアマネジャーへの報告書など、多種多様な書類作成業務を日々こなさなければなりません。
ひとりひとりの患者ごとに記録を丁寧に残す必要があり、これが業務負担の一つとなりやすいです。
電子カルテの整備や効率的な書類作成の仕組み化が進む一方、患者に寄り添った内容で記載しなければならない点もあり、ミスのない正確な記述が求められます。
そのため、書類作成に費やす時間とその重要性のバランスに悩む薬剤師も多く見られます。
スケジュール管理の難しさ
在宅医療薬剤師は、複数の患者宅を訪問するため、綿密なスケジュール管理が不可欠です。
しかし、患者の体調変化や急な訪問依頼、交通事情の影響を受けやすく、予定通りに行動できない場合もしばしばあります。
また、医師や他の訪問スタッフと連携する際には、互いのスケジュールを調整し合う必要があり、柔軟かつ迅速な対応が求められます。
こうした予測困難な予定変更や多様な業務の合間をぬって効率的に時間を使わなくてはならないことが悩みの種です。
チーム医療でのコミュニケーション
在宅医療は複数の医療職種がチームとして関わるため、薬剤師にも積極的なコミュニケーションが求められます。
医師、看護師、ケアマネジャー、訪問介護士など多くのスタッフと連携し、患者の情報を正確に共有したり、薬の提案や指導、相談に応じたりする必要があります。
しかし、職種ごとに立場や考え方の違いがあるため、意見のすり合わせや情報伝達の難しさを感じることも少なくありません。
信頼関係の構築や円滑な協力体制の維持には、コミュニケーション力や調整力が不可欠となります。
在宅医療薬剤師に求められる役割

薬剤師は在宅医療におけるケアチームの一員です。在宅医療薬剤師に求められる役割は以下の5つです。
- 患者の症状に合わせた薬の提供
- 薬の服用に関する指導
- 患者の体調変化のチェック
- 医療スタッフとの連携
- 飲み合わせの確認
それぞれ確認していきます。
役割①:患者の症状に合わせた薬の提供
在宅医療薬剤師の主な役割は、患者の症状に応じた最適な薬を提供することです。
患者の症状や現在の健康状態を詳細に把握し、それに基づいて適切な薬を選択します。
在宅医療は薬局の営業中だけでなく24時間365日体制であるため、必要であれば閉局後に患者宅へ向かい薬を届ける場合もあります。
役割②:薬の服用に関する指導
薬剤師は、処方した薬を患者が正しく飲めるように服用指導も行います。薬は、服用するタイミングや服用量、回数によっても効果が異なります。
また、過剰に薬を摂取してしまうと症状の改善どころか副作用につながる恐れもあります。
薬の服用について一方的に説明をするだけでなく患者の疑問や悩みを聞くことも服薬アドヒアランスを高めることにつながります。
役割③:患者の体調変化のチェック
患者の体調が日々変動することは珍しいことではありません。
そのため、在宅医療薬剤師は定期的に患者の体調をチェックし、体調変化に気づいた場合は速やかに医師と連携する必要があります。
例えば、薬の服用により副作用の兆候が見られた場合は、早期に発見し適切な対策を講じなければなりません。
日々の体調の確認も在宅医療薬剤師の役割となります。
役割④:医療スタッフとの連携
在宅医療は、薬剤師だけでなく多くの医療スタッフが関わります。
薬剤師は、医師や看護師、リハビリテーションの専門家と密に連携し患者に最適な薬を提供する役割を担います。
特に、患者の治療方針に変更があった際は、その情報を速やかに把握し、治療計画に適した薬に変更することが求められるでしょう。
多職種と連携し患者に質の高い医療を提供していくことも在宅医療薬剤師の役割です。
役割⑤:飲み合わせの確認
複数の薬を服用している患者に対しては、薬の飲み合わせの確認も在宅医療薬剤師の役割です。
医療の現場において薬同士の相互作用や飲み合わせが時々問題となることがあります。
患者が服用するすべての薬が安全に併用できるかを確認し、万が一、問題があれば代替薬を提案します。
特に、複数の慢性疾患を抱えている患者は多くの薬を服用している場合があるため、副作用を防ぐためにも飲み合わせの確認は必須です。
在宅医療薬剤師に求められるスキル
在宅医療薬剤師には患者の生活環境や身体状況を的確に把握し、最適な薬物治療を提供するための多様なスキルが求められます。
- 丁寧さ
- 提案力
- コミュニケーション能力
ここでは、在宅医療薬剤師として活躍するために不可欠なスキルについて詳しく解説します。
丁寧さ
在宅医療では患者やご家族と直接接し、生活の一部に深く関わることになります。
そのため、何事においても丁寧な対応が求められます。薬の説明ひとつとっても、相手の理解度に合わせてわかりやすく伝える姿勢が必要です。
また、容体の変化や環境面について何か小さな気付きを見逃さず、細やかなフォローを行うことで、信頼関係の構築や安全な服薬管理につながります。
丁寧さは在宅医療薬剤師の大切な基本姿勢といえます。
提案力
患者の体調や生活スタイルに合わせた薬の調整や、服薬方法の工夫を提案する力も不可欠です。
在宅医療では、限られた医療資源や独特の環境で最適な医療を提供しなければなりません。
例えば、複数の薬の飲み合わせや、飲み忘れ防止の工夫、さらにはカットや粉砕など服薬方法そのものの見直しまで柔軟に提案できる力が求められます。
医師や看護師、ケアマネジャーと連携しながら、患者一人ひとりの生活に合わせた提案を積極的に行う姿勢が重要です。
コミュニケーション能力
在宅医療現場では患者・ご家族だけでなく、多職種の医療・介護スタッフと連携を取る機会が多くあります。
適切な情報共有や報告、相手の立場に立った対話を通じて、チーム医療を支えるコミュニケーション能力が欠かせません。
患者が感じている不安や悩みに寄り添い、信頼関係を築くことで、治療への意欲の向上につなげることができます。
また、相手の要望をくみ取りながら、専門的な知識をやさしく伝えることも重要な役割です。
在宅医療薬剤師になるために取得しておくべき資格
在宅医療薬剤師として活躍するためには、専門的な知識と経験だけでなく、関連する資格を取得しておくことがキャリアアップにつながります。
特に「在宅療養支援認定薬剤師」は、在宅医療の現場で必要とされる知識・技能を証明する資格として、近年注目されています。
在宅療養支援認定薬剤師とは?
在宅療養支援認定薬剤師とは、日本薬剤師会が認定する資格で、在宅医療に関する専門知識や実務経験を持つ薬剤師に与えられます。
主に在宅患者への薬物療法の推進や服薬指導、地域包括ケアシステムでの役割を担うことを目的としています。
この資格を持つことで、在宅医療分野での信頼性が高まるほか、医療チームの一員として多職種と連携しながら専門性を生かした対応が可能となります。
患者やご家族からの信頼を得るうえでもアピールとなる資格です。
在宅療養支援認定薬剤師を取得する流れ
在宅療養支援認定薬剤師の資格取得には、薬剤師としての実務経験や、所定の研修受講が求められます。
まず、一定期間の調剤薬局や医療施設での在宅業務経験を積んだ上で、認定団体が実施する研修プログラムや講義を受講します。
その後、実務報告や症例提出などの審査を経て、認定試験に合格することで資格が付与されます。
資格取得後も継続的な研修や実践が求められるため、常に最新の知識を学ぶ姿勢が重要です。
在宅医療薬剤師と病院薬剤師の違い

在宅医療薬剤師と病院薬剤師では、勤務する場所や業務内容が異なります。
以下では、それぞれの特徴の違いを確認していきます。
病院薬剤師の特徴
病院薬剤師の勤務先は、所属する医療機関となり入院患者に対して薬の提供をします。
病棟内の医師や看護師などの医療スタッフとの連携や患者カンファレンスへの参加などを通して患者が服用する薬の効果の最大化を目指します。
また、院内処方を行う医療機関の場合では、外来で訪れた患者に対して薬の提供も行います。
さらに、医療機関内の薬剤管理や患者への薬の服用指導も業務範囲です。
在宅医療薬剤師の特徴
在宅医療薬剤師の勤務先は、保険薬局となります。
在宅医療薬剤師は、医師や看護師など多職種の医療スタッフと連携をとりながら患者に適した薬を提供します。
在宅医療薬剤師はチーム医療に必要不可欠

今後ますます在宅医療のニーズが高まる現代において、チーム医療において在宅医療薬剤師は必要不可欠な存在となります。
また、患者に対して適切な在宅医療を提供するためにも在宅医療薬剤師には多職種のスタッフとの密な連携が求められるでしょう。
医師や看護師、ケアマネジャーなどと連携して、在宅医療を受ける患者に安全かつ安心な医療を提供できるようにチーム医療体制を整えていきましょう。
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