専門性の高い訪問医療でも安心〜ファストドクターとの連携と活用の実際〜
公開日: 2025.04.30
更新日: 2025.04.30

むねみつホームメディカルクリニックは、大阪府高槻市を拠点に、神経難病や脳卒中後遺症などの脳神経系疾患の患者様を中心に訪問医療を提供するクリニックです。脳神経外科医としての経験を持つ院長の専門性を活かし、患者全体の8割以上が脳神経系疾患という、地域でも数少ない訪問診療に特化した体制で、多くの患者様の在宅療養を支えています。
今回は「むねみつホームメディカルクリニック」院長の宗光俊博さまに、専門クリニックならではのファストドクター活用法や導入後の変化、今後の展望について、さまざまなお話を伺いました。
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Q.むねみつホームメディカルクリニックの特徴や背景について、教えていただけますでしょうか?

むねみつホームメディカルクリニック 院長 宗光俊博さま(以下、宗光さま):
当院は、神経難病や脳卒中、認知症といった専門的医療を中心とした訪問診療クリニックで、通院困難な患者様が安心して在宅療養できることを目標としています。
脳神経外科医として、後遺症でご自宅に帰れない患者様を多く診てきました。病院だけでは限界を感じ、地域で力になりたいと考えたのが、在宅医療を目指したきっかけです。
実際に在宅医療の分野を学ぶ中で、専門的な治療を受けられずに、ご自宅で過ごす神経難病の患者様も多い現状も知りました。
そこで、脳神経外科医としての経験を活かし、これら脳神経系の疾患を持つ方々を専門的にサポートしていくことを決意し、2020年に当院を開業しました。
現在、患者様のうち神経難病の方が約28%、脳卒中や認知症の方を含めると8割を超えています。この「脳神経系の専門性」が最大の強みです。
この専門性を活かし、訪問診療で患者様がご自宅で安心して過ごせる時間を少しでも長く作れるよう日々努めています。
Q.脳神経系の疾患に特化した訪問診療クリニックは珍しいのでしょうか?

宗光さま:
少なくとも近隣地域では、脳神経外科や脳神経内科を専門とし、訪問診療をメインにしているクリニックは大変少ない状況です。
私が以前勉強させていただいたクリニックは、神経難病、特にALSなどを多く診ておられましたが、そこまで専門性に特化しているところは多くはないですね。
脳神経外科・脳神経内科のクリニック自体が少ない中で、外来の合間に訪問診療を行っている先生はいても、訪問診療に振り切っているクリニックは、全国的に見ても少ないと思います。
Q.なぜ、訪問診療に注力されているのでしょうか。
宗光さま:
脳卒中後遺症で在宅療養を諦めざるを得なかったり、たとえ在宅で診てくれる先生がいても専門外で十分な診療を受けられなかったりするケースを多く見てきたからです。
例えば専門外の先生だと、てんかんの患者様に対して、抗てんかん薬の調整を躊躇されることがよくあります。「使ったことがない」「副作用が怖い」「どのくらい出していいかわからない」という理由で、ずっと同じ量が処方され続けてしまうのです。
訪問医療でも専門性が求められる時代ですが、特に神経系の分野は専門性が高く、担い手も少ないのが現状です。だからこそ、私が専門性を活かしてその役割を担い、地域の課題をカバーできればと考え、訪問診療に力を入れていることにしました。
Q.ファストドクターを導入される前の、夜間・休日の診療体制はどのようになっていましたか?

宗光さま:
実は、ファストドクターを利用するのは今回が2回目です。一度契約して解約し、また再契約しました。
2020年の開業当初から最初の契約前までは、私一人で24時間365日対応していました。その当時、ほぼどこにも出かけられない生活でしたね。
コロナ禍が落ち着き始め、学会参加などで遠方に出向く必要が出てきた時期に、私自身が現場を離れる間の体制を考え始めました。当初はクリニックの他の医師にお願いすることもありましたが、それだけではカバーしきれない場面も想定されたため、往診代行サービスの利用を検討し、ファストドクターを導入することにしました。
Q.一度、解約されたのはなぜでしょうか?
宗光さま:
最初の契約期間は1年弱でしたが、実際にファストドクターにお願いしたのは、たった1回のみでした。
状態が悪くなりそうな徴候があれば、平日の日中にしっかり訪問する体制を築いているため、土日に緊急で呼ばれることが非常に少なかったんです。開院当初は患者さんの数も今ほど多くないため、結果的に利用する機会がほとんどありませんでした。
そうなると、月々の費用に対して利用頻度が極端に低く、費用対効果を考えると、「まだ導入時期が早すぎたのかな」と判断し、一度解約させていただきました。
Q.そこから、再契約に至ったきっかけは何だったのでしょうか?
宗光さま:
解約後、患者様は増え続け、現在では約250名になりました。患者様が増えるにつれて、やはり土日の往診依頼も増え続けてきました。これはもう一度お願いするタイミングだろうと考え、昨年の夏頃に再契約させていただいた次第です。
Q.夜間・休日往診代行サービスは他にもありますが、最終的にファストドクターを選ばれた決め手は何でしたか?

宗光さま:
ファストドクターは、コロナ禍にニュースなどで活動されているのを見て、知りました。その後、夜間・休日往診代行サービスの利用を検討し始めた際、他社と比較してみました。
他社ではエリア外だったり、対応できる医師が少なかったりという制限があったんです。一方ファストドクターはこちらのエリアを完全にカバーし、医師の数もしっかり確保されていると聞きました。
いざというときの対応力を重視していたので、この「充実した医師体制」が一番の決め手になりました。実際、今も依頼してから1時間〜1時間半で現場に到着していただいています。これは私が行くのと変わらないスピード感で大変助かっています。
Q.専門性の高い患者様が多いと伺っていますが、実際にファストドクターの医師はどのようなケースに対応されていますか?
宗光さま:
確かに、当院には神経難病の患者様や、人工呼吸器を使っている医療依存度の高い患者様も多く、導入当初は専門的な対応を依頼できるか心配でした。
しかし、実際にファストドクターにお願いするのは、ほとんどが発熱や嘔吐などの一般的な急変対応か、お看取りの対応です。専門的な管理が必要な患者様は、日中の診療で状態をしっかり把握できているため、土日に緊急対応になることは、ほとんどありません。
そのため、一般的な対応であれば、質に問題なくファストドクターに任せられます。当院のような重症度の高い患者様を多く診ているクリニックでも、安心して利用できるサービスだと思います。
Q.お看取りの対応の連携面で不安はありませんか?

宗光さま:
連携に関しても問題ありません。お看取りの際は、事前に注意点や申し送り事項をポータルサイトに詳しく記載して共有しています。また、訪問看護師が同席することもありますが、ファストドクター側で連絡調整もしてくれるので、その点もありがたいですね。
お看取りが終わった後も、ご家族様からのメッセージなどを含め、丁寧な報告をいただいています。このような情報共有体制や細やかな配慮には、本当に感謝しています。
Q.ファストドクターの導入によって、どのようなメリットを感じていますか?

宗光さま:
やはり土日祝日の時間をしっかり確保できるようになったのは、大きなメリットだと感じています。
おかげで、プライベートの時間を持てるようになりました。例えば、休日の出先で緊急の連絡が入っても、スマートフォンからポータルサイトにアクセスして往診依頼を出せます。メールとポータルサイトに対応完了の報告が入ることで患者様の状況を確認でき、とても安心しています。
導入前は、どうしてもプライベートな時間を犠牲にすることが多くありました。しかしファストドクターを導入してから、そういった負担がぐっと減りましたね。
Q.利用していて、何か改善してほしい点はありますか?
宗光さま:
現状で特に困っていることはありません。強いて言うなら、往診に来てくださる先生方の、どのような専門性や経験をお持ちなのかが事前にわかると、より安心してお任せできると感じます。
例えば、気管切開カニューレの交換や麻薬の調整など、特定の医療処置の経験があるかどうかが把握できると、私としても、より的確な判断やお願いができるかもしれません。先生方の経歴やスキルが少しでもわかると、さらに連携しやすくなるのではと思います。
Q.今後、ファストドクターに期待することは何でしょうか。
宗光さま:
ファストドクターには、地域医療の24時間体制を支える存在として、これからも頑張ってほしいですね。地域の先生方が困ったときに頼れる重要な役割を果たしていると思います。
訪問医療を提供するクリニックは、やはり24時間、患者様に対応できる体制を作る必要があると考えています。しかし、特に院長一人体制のクリニックでは負担が大きく、十分対応できていない現実もあると聞きます。ご自身の体力や時間だけで対応が難しい場合、ファストドクターのような外部サービスを利用してでも、24時間体制を確保することが大切です。
ファストドクターのような夜間・休日往診代行サービスは、まさにその課題を解決するための存在だと感じます。このシステムは本当によく考えられており、地域医療を支えるうえで欠かせませんね。
Q.今後のクリニックの展望についてお聞かせください。
宗光さま:
まずは、当院の専門分野である神経難病や脳卒中後遺症、認知症の患者様が、ご自宅で安心して、できるだけ長く過ごせる時間をサポートしていくことが、当院の大きな目標です。この地域で、そういった患者様を一人でも多く支えていきたいと考えています。
そのうえで、当院のような専門性を持った在宅クリニックの存在や取り組みが、ほかの地域の先生方にも少しでも伝われば嬉しいですね。同じような想いを持つ先生が増えていくことで、地域医療全体がもっと良くなっていくと期待したいです。
Q.最後に、ファストドクターの導入を検討されている医療機関の方へメッセージをお願いします。

宗光さま:
訪問医療のニーズは年々高まっています。これから訪問診療を始める方、あるいは拡充される方にとって、24時間対応の体制構築は避けて通れない課題です。
ご自身の体力や生活とのバランスで一人で抱えるのが大変なら、外部サービスの利用を積極的に検討すべきだと思います。これは、訪問医療を提供するクリニックとしての責任を果たすための「必要経費」と捉えるべきです。
特に、専門性の高い疾患を診ているクリニックや、医療依存度の高い患者さんを多く抱えるクリニックであっても、実際に依頼するケースの多くは発熱などの初期対応です。そういった一般的な対応はファストドクターで十分にカバーできますので、導入をためらう必要はありません。
私自身、導入前は夜間の呼び出しや看取りが続き、体調を崩すこともありました。特に、ご高齢の先生方には、ご自身の体を第一に考え、無理のない体制を作るためにも活用を強くおすすめしたいですね。導入することで、精神的・肉体的な負担が減り、結果的にストレスなく、長く訪問診療を続けていけるんじゃないかと思います。
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